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この記事の要点

先に、全体像をつかむ

下関北九州道路の建設によって、騒音や景観、関門海峡の自然環境はどう変わるのでしょうか。環境影響評価の結果と、計画されている環境保全措置をご紹介します。

  1. 環境影響評価とは

    環境影響評価、いわゆる「環境アセスメント」とは、大規模な開発事業を実施する前に、周辺環境へどのような影響が生じるかを調査・予測・評価する制度です。

  2. 配慮書から評価書までの4段階

    下関北九州道路の環境影響評価は、次の4段階で進められました。

  3. 彦島でも準備書の説明会を開催

    環境影響評価準備書については、2024年10月に住民向け説明会が開催されました。

下関北九州道路の環境影響評価とは⁠?彦島の自然・暮らしへの影響と対策を解説

下関北九州道路の環境影響評価(騒音・景観・自然環境)の解説イメージ
下関北九州道路の環境影響評価で検討された騒音・振動・景観・自然環境・生態系の観点をイメージ化

下関市彦島と北九州市小倉北区を結ぶ「下関北九州道路」は、関門海峡を橋梁で横断する延長約8kmの道路計画です。

新しい道路には、災害時の代替路確保や渋滞緩和、物流・観光の活性化などが期待されています。

一方で、彦島や関門海峡の環境に対して、次のような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

  • 道路の騒音は大丈夫なのか
  • 海や動植物に影響はないのか
  • 橋ができると景観はどう変わるのか

下関北九州道路では、事業による環境への影響を事前に調べ、予測・評価する「環境影響評価」が実施されました。

2020年から配慮書、方法書、準備書、評価書の手続きが順に進められ、2025年12月までに評価書段階の手続きが完了しています。2026年7月時点では、環境影響評価書や概要をまとめた資料が山口県のホームページで公開されています。

環境影響評価とは

環境影響評価、いわゆる「環境アセスメント」とは、大規模な開発事業を実施する前に、周辺環境へどのような影響が生じるかを調査・予測・評価する制度です。

その結果を公表し、地域住民、地方公共団体、専門家などから意見を聴きながら、環境への影響を回避・低減できる事業計画を検討します。

環境影響評価は、単に「道路を造ってよいか、悪いか」を判定するだけの手続きではありません。

どのような環境保全措置を実施するのか、工事前や工事中、完成後にどのような調査を続けるのかを整理し、計画へ反映させる役割があります。

配慮書から評価書までの4段階

下関北九州道路の環境影響評価は、次の4段階で進められました。

配慮書ルートや規模を検討する早い段階で、重大な環境影響を回避・低減する方法を検討
方法書どの項目を、どの場所で、どのような方法で調査・予測するかを決定
準備書調査・予測・評価の結果と環境保全措置を公表
評価書準備書に寄せられた意見を踏まえ、必要な修正を加えた最終的な図書

下関北九州道路では、配慮書が2020年、方法書が2022年、準備書が2024年、評価書が2025年に作成されました。

彦島でも準備書の説明会を開催

環境影響評価準備書については、2024年10月に住民向け説明会が開催されました。

彦島公民館では、10月8日午後7時と10月9日午後2時の2回、説明会が行われています。北九州市側でも、10月16日に北九州芸術劇場で昼と夜の2回が開催されました。

準備書は一定期間公開され、内容に意見を持つ方が意見書を提出できる手続きも設けられました。

その後、下関市環境審議会の答申や山口県知事の意見、国土交通大臣などの意見を踏まえ、最終的な評価書へ修正・整理されています。

評価対象となった道路の規模

環境影響評価の対象となった下関北九州道路は、約8km、4車線、設計速度時速80kmの道路です。

道路構造の内訳は、盛土部が約0.1km、切土部が約1.1km、橋梁部が約6.8kmとされています。計画交通量は、区間によって1日約7,800台から約2万8,200台と想定されています。

道路の大部分が橋梁構造になるため、陸上の住宅地だけでなく、関門海峡の海域、沿岸部、地域の眺望なども調査対象となりました。

何について調査・評価されたのか

下関北九州道路の環境影響評価では、主に次の項目について調査・予測・評価が行われました。

  • 大気質・粉じん
  • 騒音
  • 振動
  • 低周波音
  • 水質・海水の濁り
  • 海底の底質
  • 地形・地質
  • 日照阻害
  • 動物
  • 植物
  • 生態系
  • 景観
  • 人と自然との触れ合いの活動の場
  • 建設工事で発生する廃棄物や残土

工事中の建設機械や工事車両の影響だけでなく、道路完成後の自動車走行、橋梁や道路構造物の存在による変化も対象とされています。

大気質への影響

道路が整備されると、自動車の排出ガスによる二酸化窒素や浮遊粒子状物質、工事車両や建設機械による粉じんなどが発生する可能性があります。

評価書では、彦島迫町や福浦町、北九州市西港町などで予測が行われました。

自動車走行による二酸化窒素は最大0.036ppm、浮遊粒子状物質は最大0.062mg/㎥と予測され、すべての予測地点で環境基準以下になるとされています。

工事中の粉じん対策としては、工事車両のタイヤ洗浄、工事用道路への散水、出入口の分散、既存道路の交通量を考慮した運行ルートの選定などが計画されています。

騒音への影響

彦島の住民にとって、特に関心が高いと考えられるのが騒音です。

道路完成後の自動車走行による騒音については、一部の地点で、対策を行わない場合に環境基準を超えると予測されました。

しかし、必要な環境保全措置を実施することで、近接空間では最大で昼間70dB・夜間65dB、道路から離れた背後地では最大で昼間65dB・夜間60dBとなり、すべての予測地点で環境基準以下になるとされています。

具体的な対策として、必要に応じて遮音壁の設置や排水性舗装の採用、道路構造の工夫などが検討されます。

工事中の建設機械による騒音についても、一部地点では対策前に規制基準を超える予測がありましたが、防音シートによる仮囲いや橋桁下部の覆工などを実施することで、すべての予測地点で規制基準以下になるとされています。

振動・低周波音への影響

建設機械の稼働や工事車両、自動車の走行による振動についても予測が行われました。

建設機械による振動は最大64dBと予測され、すべての予測地点で規制基準以下になると評価されています。

橋梁を自動車が通過するときに発生する低周波音についても調査対象となりました。

低周波音は人によって感じ方が異なるため、詳細設計の段階でも橋梁形式や路面、構造物の接合部などを確認し、必要な対策を検討していくことが重要です。

日照への影響

彦島側では、高架道路や橋梁によって住宅などに影が生じる可能性も調査されています。

彦島迫町や福浦町の複数地点で、地形による日影と道路構造物による日影が予測されました。

環境保全措置として、橋梁の上部構造や橋脚の形式・配置を工夫し、日照への影響をできる限り抑える方針が示されています。

日照への影響は、道路の高さや橋脚の位置、住宅との距離によって変わるため、今後の詳細設計でも地域ごとの確認が必要です。

河川や関門海峡の水質への影響

工事では、陸上の掘削や盛土、海底の掘削、橋脚や主塔の基礎工事などが想定されています。

その際、土砂や濁った水が河川や関門海峡へ流れ出す可能性があります。

陸上工事では、仮排水溝、沈砂池、濁水処理施設を設け、工事で発生する濁水を直接河川などへ流さない対策が計画されています。盛土部分では、速やかに法面を整形・緑化し、土砂流出を抑える方針です。

海上工事では、水底の掘削工事が特定の時期に集中しないよう調整し、汚濁防止膜を設置することで、濁りの発生や拡散を抑える計画です。

動物・植物・生態系への影響

現地調査などでは、重要な動物94種、重要な植物10種、注目すべき生息地2か所、重要な植物群落1か所が確認されました。

生態系については、丘陵地・台地、低地・海岸、海域・汽水域の3つに分けて評価されています。

調査対象には、ミサゴ、フクロウ、ハヤブサ、キツネ、スナメリ、スズキ、マダイ、マダコ、アサリなどが含まれています。

評価書では、低地・海岸を中心とする生態系は保全されると予測されています。

一方、関門海峡の水域を中心とする生態系については、工事で発生する水中音などによって影響が生じ、十分に保全されない可能性があると予測されました。

この点は、「環境影響評価で問題がないと判断された」と単純に捉えるのではなく、工事中や完成後も継続して確認すべき重要な項目です。

ミサゴ・フクロウ・スナメリを継続調査

影響の予測に不確実性がある動物については、事後調査が予定されています。

対象となっているのは、ミサゴ、フクロウ、スナメリです。

ミサゴは工事前から工事中、フクロウは工事前から工事中・工事後、スナメリは工事前から工事中・工事後・道路供用後までモニタリングする計画です。

ミサゴやフクロウについては、繁殖時期に配慮した工事時期の検討、低騒音型建設機械の採用、段階的に工事音へ慣らす「コンディショニング」、必要に応じた巣箱の設置などが検討されます。

スナメリへの対策としては、海底掘削工事を始める際、最初から大きな水中音を発生させず、徐々に作業を開始して動物が離れる時間を確保する「ソフト・スタート」が計画されています。

調査によって著しい影響が確認された場合は、専門家の意見や指導を受け、追加の措置を検討するとされています。

夜間照明と生き物への配慮

道路が完成すると、交通安全のために照明が設置されます。

一方で、夜間照明は昆虫や夜行性動物の行動に影響を与える可能性があります。

そのため、道路の外へ光が漏れにくい構造や、昆虫を引き寄せにくい照明の採用が検討されています。

法面の緑化についても、可能な限り地域に元から生育している在来種を使用し、外来種の持ち込みを防ぐ考え方が示されています。

関門海峡と彦島の景観はどう変わるのか

下関北九州道路では、関門海峡を横断する大規模な橋梁が計画されています。

そのため、景観への影響について、老の山公園、彦島南公園、海峡ゆめタワー、小文字山、ひこっとらんどマリンビーチなどから見た将来の眺望が予測されました。

主要な眺望点7か所、地域住民が日常的に利用する身近な眺望点4か所が評価対象となっています。

評価書では、眺望点そのものが直接失われることはないとされています。

一方で、橋梁が見えるようになるため、現在の眺望には変化が生じます。

構造物や道路付属物のデザイン・色彩を検討し、法面を緑化することで、周辺景観との調和を図る方針です。

景観は数値だけで判断しにくく、人によって感じ方も異なります。

橋が関門地域の新たなランドマークになる可能性がある一方で、彦島らしい海や丘陵地の風景をどのように残すかも、今後の設計で大切な視点になります。

老の山公園やマリンビーチへの影響

地域の方々が自然と触れ合う場所については、老の山公園、ひこっとらんどマリンビーチ、荒田埠頭、日明・海峡釣り公園の4地点が調査されました。

老の山公園などでは一部が改変されるものの、大部分が残るため、自然と触れ合う場としての機能は保全されると予測されています。

道路が見えることによって快適性に変化が生じる可能性はありますが、橋梁や道路付属物のデザイン・色彩、緑化によって影響を低減する計画です。

北九州側の日明・海峡釣り公園については、駐車場の一部が改変されるため、代替地へ移設する環境保全措置が示されています。

建設残土や廃棄物への対応

大規模な道路工事では、掘削した土、建設汚泥、コンクリート、アスファルト、木材などが発生します。

評価書では、建設発生土が約91万9,000㎥発生し、そのうち約13万2,000㎥を事業区域内で再利用する計画が示されています。

残る土砂についても、ほかの公共事業での利用を検討し、建設汚泥やコンクリートなどは法令に基づき、再利用または適正に処理するとされています。

橋脚や主塔を必要最小限にする計画

関門海峡の環境や船舶の航行への影響を抑えるため、海上部では橋脚や主塔の数を必要最小限にし、断面積も必要以上に大きくしない計画です。

陸上では工事施工ヤードをできるだけ計画道路上に置き、工事用道路は既存道路を極力利用します。

海上部の資材運搬には海上輸送を活用し、陸上の工事車両台数や土地改変を抑える方針も示されています。

「適正な配慮」とは影響がゼロという意味ではない

環境影響評価書では、道路の位置や基本構造の検討段階から環境に配慮し、環境保全措置や事後調査を実施することで、環境への影響を可能な限り回避・低減していると評価されています。

そのため、事業全体として「環境の保全について適正な配慮がなされている」と結論づけられています。

ただし、これは「環境への影響がまったく発生しない」という意味ではありません。

騒音や景観の変化、工事に伴う水中音、生態系への影響など、対策や継続調査が必要な項目も明記されています。

今後の詳細設計や工事では、評価書に示された環境保全措置を確実に実施し、事後調査の結果を地域へ分かりやすく伝えていくことが重要です。

工事前・工事中・完成後も確認が続く

評価書では、事業計画が変更された場合や、交通量、生活環境、自然環境、環境基準などに変化があった場合、必要に応じて影響の程度を確認するとしています。

工事を実施する際には、工事説明会などを通じて、地域住民に環境影響と環境保全措置を丁寧に説明する方針も示されました。

環境影響評価は、評価書を作成して終わりではありません。

計画どおりの対策が行われているか、予測していなかった影響が発生していないかを、工事前から道路完成後まで確認していく必要があります。

彦島の暮らしと自然を守りながら進める道路計画へ

下関北九州道路には、防災、交通、物流、観光など、彦島や関門地域の未来につながる多くの効果が期待されています。

一方で、彦島は住宅地、工業地域、海、丘陵地が近接し、多様な生き物が暮らす地域でもあります。

道路の必要性や整備効果だけでなく、騒音、日照、景観、海域環境、生態系などへの影響を確認し、必要な対策を実施することが欠かせません。

彦島活性化推進協議会では、今後も国や山口県、下関市、北九州市の公表資料を確認し、下関北九州道路の進捗と、地域の暮らし・自然環境への影響について分かりやすくお伝えしてまいります。

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よくある質問

配慮書、方法書、準備書、評価書の手続きが進められ、2025年12月までに評価書段階の手続きが完了しました。評価書と概要資料は山口県のホームページで公開されています。

一部の地点では、対策を行わない場合に環境基準を超えると予測されました。遮音壁や舗装などの環境保全措置を実施することで、すべての予測地点で環境基準以下になるとされています。

工事中の濁りや水中音によって、海域の生態系に影響が生じる可能性があります。汚濁防止膜や工事開始時の工夫に加え、スナメリなどのモニタリング調査が予定されています。

橋梁が見えるようになるため、老の山公園やマリンビーチなどからの眺望には変化が生じます。構造物のデザインや色彩、法面緑化によって影響を低減する計画です。

ミサゴ、フクロウ、スナメリなどについて、工事前、工事中、工事後、道路完成後のモニタリングが計画されています。調査結果によっては追加対策が検討されます。

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