お知らせ・活動報告

協議会からのお知らせと地域の話題をお届けします。

この記事の要点

先に、全体像をつかむ

下関には、性格の異なるふたつの魚市場があります。彦島西山町にある「南風泊市場」は、ふぐを専門に扱う国内唯一の卸売市場。一方、下関市街地の「唐戸市場」は、一般客も買い物や食事を楽しめる、卸小売両方の市場です。ふたつの市場がどうつながり、下関のふぐが彦島から市街地へどう渡っていくのか、その成り立ちと道のりをご紹介します。

  1. 南風泊市場|彦島にある「ふぐの卸専門市場」

    彦島西山町にある南風泊市場は、昭和49年(1974年)に開設された、国内で唯一のふぐ専門産地市場です。天然とらふぐをはじめ、日本で獲れる約20種類のふぐが全国から集まり、取扱量は日本一…

  2. 唐戸市場|下関市街地にある「卸も小売もできる市場」

    一方、関門海峡を挟んで彦島の対岸、下関市街地の唐戸地区にあるのが唐戸市場です。唐戸市場は、下関や北九州の飲食のプロも仕入れに通う卸売市場でありながら、小売りも行っているのが大きな特徴で…

  3. 週末だけの特別な表情「活きいき馬関街」

    唐戸市場を一躍有名にしたのが、毎週末・祝日に開催される「活きいき馬関街」です。市場の1階が丸ごと海鮮屋台街に変わり、その日に水揚げされたばかりの魚を使った握り寿司や海鮮丼、ふぐ刺し、か…

唐戸市場と南風泊市場|彦島と下関市街地をつなぐ、ふたつの魚市場の物語

多くの人でにぎわう唐戸市場の店内、海鮮を扱う屋台と提灯・のぼりが並ぶ様子
活気にあふれる唐戸市場の店内(下関市街地)

写真: そらみみ(CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons)

下関には、性格の異なるふたつの魚市場があります。ひとつは、彦島西山町にある「南風泊市場(はえどまりしじょう)」。もうひとつは、下関市街地・唐戸地区にある「唐戸市場」です。

「どちらも下関の魚市場」と聞くと、同じようなものだと思われるかもしれません。しかし実際には、この2つの市場は役割がまったく異なり、しかも見えないところでしっかりとつながっています。今回は、彦島と下関市街地、それぞれの市場の特徴と成り立ち、そしてその間をふぐが渡っていく道のりをご紹介します。

南風泊市場|彦島にある「ふぐの卸専門市場」

彦島西山町にある南風泊市場は、昭和49年(1974年)に開設された、国内で唯一のふぐ専門産地市場です。天然とらふぐをはじめ、日本で獲れる約20種類のふぐが全国から集まり、取扱量は日本一を誇ります。

対馬周辺や瀬戸内海、豊後水道、伊勢湾などを主な漁場とする、はえ縄漁による天然ふぐに加え、九州や西日本各地で養殖されたふぐも、この市場に集まってきます。南風泊市場は下関のふぐ流通の要であり、全国の天然トラフグの価格を先導する立場にもあります。

南風泊市場は、仲卸業者など専門の業者を対象とした卸売市場のため、一般の方が普段から自由に見学できる場所ではありません。せりが行われるのは、まだ夜も明けきらない午前3時台という早朝の時間帯。「袋競り(ふくろぜり)」と呼ばれる、せり人と仲買人が布袋の中で手を握り合い、指先の感覚だけで価格を伝え合う、全国でも珍しい方法で取引が行われています。周囲から金額が分からないようにすることで、公正な取引を行うための工夫とされています。

南風泊市場の歴史や「袋競り」の詳しい仕組みについては、関連記事「南風泊市場とは?日本一のふぐ取扱量を誇る彦島の卸売市場」もあわせてご覧ください。

唐戸市場|下関市街地にある「卸も小売もできる市場」

一方、関門海峡を挟んで彦島の対岸、下関市街地の唐戸地区にあるのが唐戸市場です。唐戸市場は、下関や北九州の飲食のプロも仕入れに通う卸売市場でありながら、小売りも行っているのが大きな特徴です。南風泊市場とは異なり、一般の方でも新鮮な魚介類をその場で購入したり、味わったりすることができます。

平日の唐戸市場は、地元の飲食店や個人客が買い物に訪れる、落ち着いた「市場」としての顔を見せます。仲卸の店先には、ふぐだけでなく、瀬戸内海や日本海で水揚げされたさまざまな鮮魚、練り物、干物などが並び、観光客だけでなく地元の方々の台所としての役割も担っています。

週末だけの特別な表情「活きいき馬関街」

唐戸市場を一躍有名にしたのが、毎週末・祝日に開催される「活きいき馬関街」です。市場の1階が丸ごと海鮮屋台街に変わり、その日に水揚げされたばかりの魚を使った握り寿司や海鮮丼、ふぐ刺し、から揚げなどが、屋台感覚で楽しめます。開催は金・土・日・祝日で、金・土曜日は9時から15時まで、日曜・祝日は8時から15時までとなっています(開催時間は変更される場合があるため、お出かけ前に唐戸市場公式サイトでのご確認をおすすめします)。

「活きいき馬関街」の魅力は、なんといっても仲卸のプロが握る寿司や海鮮丼を、その場で気軽に味わえることです。市場らしい活気の中で、旬の魚介をつまみ食い感覚であれこれ楽しめるスタイルは、観光客だけでなく、地元の方のリピーターも多いといいます。早朝のせりで真剣勝負が繰り広げられる南風泊市場と、週末になると多くの観光客でにぎわう唐戸市場。同じ「下関の魚市場」という言葉でくくられがちな2つの市場ですが、その役割や雰囲気はまったく異なります。

彦島から下関市街地へ|ふぐがつながる道のり

では、この性格の異なる2つの市場は、どのようにつながっているのでしょうか。

対馬周辺や瀬戸内海、豊後水道などの漁場で獲れた天然ふぐ、そして九州や西日本各地で育てられた養殖ふぐは、まず彦島の南風泊市場に集まります。ここで仲卸業者が「袋競り」によってふぐをせり落とし、身欠き(下処理)した上で、全国各地へと出荷していきます。

その出荷先の一つが、対岸の下関市街地です。南風泊市場で取引されたふぐや、その他の水産物の一部は、仲卸や小売店を経由して、唐戸市場をはじめとする下関市街地の店先に並びます。そこで観光客や地元の方が、「活きいき馬関街」の屋台や、周辺の飲食店で、ふぐ料理や新鮮な海の幸として味わうことになります。

つまり、彦島の早朝の厳しいせりから、下関市街地の週末のにぎわいまで。ひとつのふぐが渡っていく道のりの中に、彦島と下関市街地、それぞれの役割が組み込まれているのです。関門海峡を挟んだこの2つの市場は、離れているようでいて、実は「下関のふぐ文化」という一つの物語でつながっています。

なぜ彦島に「産地市場」、下関市街地に「消費地市場」があるのか

この役割分担には、彦島と下関市街地、それぞれの立地が深く関わっています。

彦島は、関門海峡と響灘に囲まれた漁業の島です。南風泊は、江戸時代から明治にかけて活躍した廻船「北前船」が、関門海峡を通過する際に強い南風を避けて停泊した港とされ、古くから海運・漁業と結びついてきました。天然ふぐの水揚げや、専門業者による下処理・流通機能を集約させるには、こうした漁港としての歴史と立地を持つ彦島が適していたと考えられます。

一方の下関市街地・唐戸地区は、古くから本州と九州を結ぶ交通の要衝として栄え、人や物が行き交う商業の中心地でした。唐戸市場が、産地市場ではなく「消費地市場」として、小売りや飲食機能を発展させてきた背景には、こうした市街地ならではの人の集まりやすさがあります。

彦島が「つくる・整える」役割を、下関市街地が「届ける・味わう」役割を担う。この分業があったからこそ、下関は全国に名を知られる「ふぐの街」として発展してきたといえます。

県外・海外からも仕入れに訪れる産地市場

南風泊市場の存在感は、下関・彦島にとどまりません。天然とらふぐの取扱量が日本一を誇ることから、県外の仲卸業者や飲食店関係者が、直接買い付けに訪れることも珍しくないといいます。全国の天然トラフグの価格動向は、南風泊市場でのせり値が一つの指標になっているともいわれ、いわば「日本のふぐ相場」を左右する存在です。

一方の唐戸市場は、観光地としての知名度の高さから、国内外の旅行者が「本場のふぐ」を味わうために立ち寄る、いわば下関の食の玄関口としての役割を担っています。産地としての実力を持つ彦島と、それを発信する舞台としての下関市街地。この組み合わせが、下関を全国に知られる「ふぐの街」として押し上げてきたといえるでしょう。

ふたつの市場、こんなところが違う

所在地南風泊市場:下関市彦島西山町 / 唐戸市場:下関市唐戸町
役割南風泊市場:卸売専門(産地市場) / 唐戸市場:卸売+小売
一般の方の利用南風泊市場:原則不可(「ふくの日まつり」など一部除く) / 唐戸市場:可(買い物・飲食)
にぎわう時間帯南風泊市場:早朝のせり(午前3時台〜) / 唐戸市場:週末・祝日の「活きいき馬関街」
主な役割南風泊市場:日本一のふぐ流通拠点 / 唐戸市場:観光・食のにぎわい拠点

ふぐが最もにぎわう季節はいつ?

南風泊市場や唐戸市場を訪れるなら、知っておきたいのがふぐの「旬」です。天然とらふぐの漁期は秋から冬にかけてで、特に11月から2月頃が最も味が良いとされる季節です。気温が下がり、身が引き締まるこの時期は、南風泊市場のせりも一年で最も活気づく時期のひとつとされています。

この時期に合わせて、毎年2月には南風泊市場で「ふくの日まつり」が開催され、通常は一般見学ができない市場内で、ふく刺しなどの即売会が行われます。ふぐの旬とあわせて訪れることで、彦島と下関市街地、両方の市場の魅力をより深く味わうことができます。

一方で、唐戸市場の「活きいき馬関街」は、季節を問わず一年を通して週末・祝日に開催されています。ふぐ以外にも、その時期に水揚げされる旬の魚介を使った握りや丼が楽しめるため、いつ訪れても下関の「今」の海の幸を味わえるのも魅力です。

両方の市場を訪ねるときのポイント

南風泊市場と唐戸市場、両方の市場をあわせて訪れたいという方に向けて、いくつかポイントをご紹介します。

  • 南風泊市場は業者向けの卸売市場のため、一般の方が日常的に見学することはできません。市場の雰囲気を感じたい場合は、例年2月に開催される「ふくの日まつり」など、一般開放されるイベントの開催情報をご確認ください。
  • 唐戸市場で「活きいき馬関街」を楽しみたい場合は、開催日(金・土・日・祝日)と開催時間を事前に確認しておくのがおすすめです。特に人気の屋台は、午前中の早い時間帯に売り切れることもあります。
  • 彦島から唐戸市場へは、彦島大橋・関彦橋を経由して車で10〜15分ほどでアクセスできます。ふたつの市場を1日で巡ることも十分可能な距離感です。

橋がつなぐ市場、道路がつなぐ未来

彦島の南風泊市場と下関市街地の唐戸市場をつなぐのは、水産物の流通経路だけではありません。彦島大橋・関彦橋という実際の橋が、彦島と下関市街地を物理的に結び、ふぐや水産物を積んだトラックが日々行き交っています。

現在、彦島と北九州市小倉北区を結ぶ「下関北九州道路」の整備が計画されています。この道路が直接、南風泊市場と唐戸市場を結ぶわけではありませんが、彦島と本州・九州の広域的な交通ネットワークが強化されることで、彦島発の水産物がより広い範囲に、より効率的に届けられるようになることが期待されます。

彦島活性化推進協議会が下関北九州道路の意義を発信しているのも、こうした彦島の産業を支える交通基盤の重要性を、多くの方に知っていただきたいという思いからです。南風泊市場のふぐが、唐戸市場を経て、そしてこれからは北九州方面へも、より活発に行き交う未来を思い描きながら、彦島の産業の今をお伝えしています。

彦島と下関市街地、それぞれの魅力を知る入り口として

南風泊市場と唐戸市場は、下関のふぐ文化を支える、いわば車の両輪のような存在です。彦島の南風泊市場が「つくる・整える」場所だとすれば、下関市街地の唐戸市場は「届ける・味わう」場所。この2つがあってはじめて、下関は「ふぐの街」としての姿を保っています。

彦島活性化推進協議会では、彦島の産業や文化を、対岸の下関市街地とのつながりも含めてご紹介しています。南風泊市場のある彦島から唐戸市場のある下関市街地まで、関門海峡を挟んだ2つの市場を訪ね比べてみるのも、下関のふぐ文化をより深く知る旅になるはずです。

よくある質問

南風泊市場(彦島)はふぐ専門の卸売市場で、一般の方は原則利用できません。唐戸市場(下関市街地)は卸売と小売の両方を行っており、一般の方も買い物や食事を楽しめます。

南風泊市場で取引されたふぐの一部は、仲卸や小売店を経由して下関市街地に流通し、唐戸市場や周辺の飲食店でも提供されています。すべてのふぐが唐戸市場に渡るわけではありませんが、両市場は下関のふぐ流通でつながっています。

毎週末・祝日に唐戸市場の1階で開催される海鮮屋台街です。金・土曜日は9時から15時、日曜・祝日は8時から15時まで開催され、握り寿司やふぐ刺しなどをその場で楽しめます。

業者専門の卸売市場のため、通常は一般見学ができません。毎年2月に開催される「ふくの日まつり」の際には、市場内に入ることができます。

彦島大橋・関彦橋を経由して、車でおよそ10〜15分が目安です。道路状況により変動しますので、お出かけ前にご確認ください。

主な引用元・参考資料

唐戸市場「活きいき馬関街」の開催日時は変更される場合があります。最新情報は唐戸市場公式サイトでご確認ください。

関連記事

お知らせ一覧へ戻る